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Interop Tokyo Conference (3) 5Gとその先へ: ネットワークのソフトウェア化による構造改革

今回も、順番に記しているInterop Conferenceの続き(前回記事)。

◆[YA-03] 5Gとその先へ: ネットワークのソフトウェア化による構造改革

https://interop.jp/conf/YA-03.php

初日の最大の収穫。かな。

【前置き】

移動通信網での5Gでは,世界規模にせよガラパゴス日本にせよ,覇権争いのアピール合戦が激しくて,「それって本当に5Gの話をしているの?」と疑問に思う眉唾な話が多い。このセッションでは,5Gのスゴイところとして挙げられている特徴が本当に実現できるのかという点と,次世代(つまり5G)の本質的な意義の2点に切り込もうとしたところに,大きな価値がある。「携帯キャリアなどの産業界には言えないことを言う」ことを意図して用意されたたセッションなんだろう。展示会場内や基調講演など,企業が広告宣伝費で買い取った枠など,産業界によるちょっと鼻に付くアピール合戦は,今回のInteropの中では飽きるほどたくさんあったはずだ。だからこそ,それらとは別枠で,聴講者費用を払うInterop Conferenceの意義がある。

【5Gの実態】

5Gの3つの特徴: (1) 広帯域: eMBB = ピーク20Gbps,(2) URLLC = 無線区間遅延1ms (3) mMTC = 100万デバイス/km*2 →これらが5GのKPI,つまり目標である。目標ではあるが,実現できているのか?をズバッとはっきりとは言ってくれなかったが,江崎教授のツッコミに対する中尾教授の回答は「キャリアの実証実験の結果が出てきているが,なかなかたいへんそう」というような趣旨の回答。今年や来年に達成できるというものでは無いのだろう。一例として,ミリ波である28GHzでの通信では樹木の木の葉の影響すら受けるので,夏と冬で街路樹の茂み具合とかで性能に影響が出るだろうと。
【ソフトウェア化と通信産業の今後】
通信事業者のインフラの中身ソフトウェア化しつつある。これは5Gの話ではなくてSDNやNFVの話ではあるが,5Gの実現に際してもソフトウェア化は大きな潮流。かつ,5Gのように高密度でインフラ整備が必要なケースでは,設備とサービスをソフトウェアと仮想化によって分離していく考え方が必要になる。総務省の「電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証中間報告書」でも指摘されているらしい。
そこで,『OSSの出番ですよ』となる。「Open Air Interface」という名称で富士通と一緒に5G基地局のOSS開発に取り組んでいるらしい。また,Linux Foundationが「Acumos AI」というSDN含むプロジェクトを始めているらしい。

【まとめ】

5Gは,ちょっと?かなり?バズワード的な様相ではあるものの,世界規模大きな投資を集めている結果として,いろんなダイナミズムを生み出しているのはたしかだろう。ネットワークのソフトウェア化&仮想化がこのダイナミズムに乗って進展するのは間違いないし,世界のオープン化の潮流も合わさって,移動通信網というこれまではコテコテの設備産業だった業界でのOSSの動きが活発になってくるのを期待したい。

《リンク》

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5600ページのIEEE 802.3-2018が入手可能になった

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IEEE802標準文書の入手

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RFCは番号を無駄遣いしていないか?

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