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「AI vs. 教科書を読めない子供たち 」(audiobook)


NII 国立情報学研究所) 新井紀子さんの「AI vs. 教科書を読めない子供たち」を,オーディオブックで読んだ。いや,朗読だから,読んでもらったのを聞いた。

新井紀子さんは,NetCommonsを開発したときの,NIIのリーダでもある。NetCommonsは“LMS (Learning Management System)でCMS機能も統合したもの”という紹介の仕方でいいのだろうか。OSSコンソーシアムの教育ICT部会の活動のターゲットのひとつになっている。

(書籍出版元) https://store.toyokeizai.net/books/9784492762394/
(オーディオブック) https://audiobook.jp/product/240051

【まとめコメント】

この本の超サマリを私なりにすると2点。
  1. 【AIに対して】AIを正しく理解しよう。ちゃんと理解していれば「シンギュラリティが云々」と不安がることもない。
  2. 【人に対して】問題は人の側。機械的なデータ処理にも劣る程度の理解力を改善しないといけない。タイトルは“教科書を読めない子供たち”だが、子供だけの問題ではない。

新井さんの関心事は,AIの方では無くて,人(教育)の方にある様だが,最初からそういう観点で東ロボ君のプロジェクトを進めていたのかどうかは未知数。勝手な邪推だが,途中から関心事が移ろっていたのでは?という感想をいだく。
ただ,TEDに登場したときの話と一貫しているのも事実。
→ TEDTalks テクノロジー 「ロボットは大学入試に合格できるか? | Noriko Arai」, http://www.ted-ja.com/2017/09/noriko-arai-can-robot-pass-university.html

【ピックアップ】 ((正確に引用しているわけではない))

  • センター入試英語の穴埋め問題の簡単な状況を,東ロボ君は理解できなかった。
    • … AIは「理解をしない」,「データを処理しているだけだ」。
  • 統計が論理的に何を意味するのか解明されているとは言いがたい。
    • … 見方によっては当然のこと。たとえば「平均値の意味」を統計学は与えてくれない。意味を持たせるのは統計学ではなくて,その値を使う側の責任。
  • {前置き} AIが社会に与える影響を考えときの観点になる経済用語:
      (1)一物一価,
      (2)情報の非対称性 {売り手のみが詳しい情報を持っている様なケース},
      (3)需要と供給の関係
    • → これまでは情報の非対称性が続く期間は独占性によって利益を確保してきた/その利益が製品開発や品質向上に掛けるコストになってきた/けれどデジタル(≒インターネット)によって一物一価に至る時間が極めて短くなった/云々
    • … OSSの普及や啓蒙の参考として興味深い。「情報の非対称性」の観点は,よく話題に上る。この論点(OSSと情報の非対称性)については,別途どこかで論じたい。

コメント

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5600ページのIEEE 802.3-2018が入手可能になった

IEEE 802.3の名称は今では「IEEE Standard for Ethernet」になっている。 「イーサネットとIEEE 802.3は別物なんだよ」という話は,今では昔話でしかない。もうひとつ“いまはむかし”な話をすると,「イーサネットはCSMA/CDだよ」なんて言うと恥をかくのでやめた方がいい。こちらは名称の問題では無く中身の話だが,ここでは詳しい説明は割愛する。 この「イーサネット標準」の2015年以来の改訂版が,2018年8月に発行。6ヶ月のIEEE会員限定期間が過ぎたので,一般にも入手可能になった。ただし個人アカウントは取得する必要がある。この話は以前に書いた ( https://nmizos.blogspot.com/2017/12/ieee802.html 参照)。 https://ieeexplore.ieee.org/document/8457469 このネタをブログにしようと思った動機はタイトルに記してしまった。この規格は改定されるたびにドンドン太って巨大になってきている。本編改訂の間に発行されたamendment (補遺と訳すのがいいのかな)が取り込まれるので,太るのはしょうがない面もある。でもねぇ,ついに5600ページ。もちろん通し読みするようなものじゃない。PDFファイルなので「厚さ」は無いが,印刷したらどれくらいになるんだろう。 参考までに,過去10年の本編のボリュームを比較してみた。  2008 = 5分割,2977ページ  2012 = 6分割,3748ページ  2015 = 4017ページ,56Mバイト  2018 = 5600ページ,98Mバイト 以前は数セクションにファイルを分割して公開されていた。ファイルが大きすぎるのを気にしてたんだろう。2018版も中身は8セクションに分かれている(ページ番号も別に付いている)のを,PDFファイルとしては合体してある。100Mバイト程度のPDFが「デカ過ぎて開けない」ってことも無いだろうから,1本になっていた方が全文検索ができて都合がいい。ちなみにiPadで開いて全文検索しても,今の98Mバイトなら困らない。 参考までに,無線LANのIEEE 802.11の方は,802.11-2016が3534ページ。こちらも結構なもんだ。 --

IEEE802標準文書の入手

■概要 入手方法が変わった。たぶん2017年のどこかから。 ダウンロードの都度メルアド等を入力するのではなくて,メンバ登録&ログイン形式に。 個別の参照(入手)時点の操作も変わった。 概要の表示ページから“Download PDF”を選ぶとPDFファイルが呼び出されるが… 即ダウンロードでは無くて,(ブラウザ依存だと思うがFirefoxの場合は)インラインでPDF表示になるので,その後に表示しているPDFをダウンロードさせることになる。 802.3の場合は困ったことに文書がデカ過ぎる。従来は複数パート(セクション)にPDFが分割されていたが,参照方法が上記の様に変わったのに合わせて,802.3全体が1本のPDFに。なんと4000ページ超,50MB超の1本のPDFになり,それをまとめてインライン表示しようとするので,待ち時間がとても長い。メモリの少ないPCだと途中でアカンことになりそう。   ---- ■操作 入口=  http://ieeexplore.ieee.org/browse/standards/get-program/page/series?id=68 (  http://ieeexplore.ieee.org/  からでもたどれるだろう )。 メニューをたどって,例えばIEEE 802.11(無線LAN)の標準文書を参照しようとすると… “Download PDF”は選択できなくなっている。 画面最上部の“Personal Sign In”からログインすると… “Donwload PDF”が有効になる。 概要でも記したように標準文書フルテキストPDFのダウンロードは,Firefoxの場合にブラウザのインラインでの表示になるので,保存する場合にはブラウザの操作でファイル保存する。 ユーザ登録は“Create Account”から。 入力方法などは自助努力で。(画面のガイダンスや注意事項を読みましょう)。 --

RFCは番号を無駄遣いしていないか?

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